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「さあ、一つ拝見しませう」
「化物が出た……」と、根津は笑った。「どんな物が出た。」
「ごめん下さい」
三間つゞきの奥座敷では蝋燭だの燈芯の明りで照し出された仏壇を前に、来客達が思ひ思ひの所にかたまつて坐つていた。
と、彼は恐しく手まどつて答へた。
「馬子まごにも衣裳つて云ふから――」と云つたほどである。
「徳さんが、――今、そこに、おかみさんが来てるんですわ」
「理窟があるやうな無いやうな話でね。こゝの隠居は相手にならなかつたから、たうとう訴訟といふ所まで来たんだらうが、何しろ相沢の先代とこゝの隠居とは兄弟だしね、――どんな理窟があるにしてもあまり賞めた事ぢやないね」
「さうなんですよ。まあだ帰らないの」
貰った方でもそのままには済まされないから、返礼のしるしとして自分が携帯の菓子類を贈る。携帯品のない場合には、その土地の羊羹ようかんか煎餅せんべいのたぐいを買って贈る。それが初対面の時ばかりでなく、日を経ていよいよ懇意になるにしたがって、時々に鮓すしや果物などの遣やり取りをすることもある。
「消防演習だ?ふむ、よからう。そんなら訊くが、かうしてみんな集つて騒いでいるのは何のためだか知つてるか」
「よし。今行く」
「いや、まあ。――後の分もありますよつて、黙つて預つといて下さい」